患者の論理・医者の論理(第2回)
異文化コミュニケーションとしての患者―医師関係
尾藤 誠司
1
1国立病院東京医療センター総合診療科
pp.461-465
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100617
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患者と医療者の間に流れる大きな河
近年になって,患者-医療者関係は大きな変革期を迎えようとしている.医師がもつべき技術として面接技術の重要性が盛んにいわれるようになってきており,医療面接やコミュニケーションに関する書籍もここ数年,数多く出版されてきている.また,医学部のカリキュラムのなかでもコミュニケーション技法に関するプログラムが組まれるようになってきており,現在では実技の単位取得のための項目にも組み込まれている.これも時代の流れを示すもののひとつであろう.
患者-医療者間のコミュニケーションの必要性が高まってきた背景としては,さまざまな要素が考えられる.第一には,患者-医療者(とくに医師)関係の力学が変化してきたことであろう.今までのように,医療行為がブラックボックスのまま,医師の裁量のみに依存して行われることの不適切性が指摘されはじめ,医療を受ける主体である患者の権利を守るための動きが活発になってきている.さらに,昨今の相次ぐ医療事故報道や医事紛争の増加にみられるように,医師の独善のみで医療が行われることによる弊害が表ざたになってきており,医療提供に関するインフォームド・コンセントの重要性を患者側も医療者側も意識するような状況になってきている.それによって,パターナリスティック(J1)な関係にあった患者-医師間の関係が見直されつつあることは重視すべきことであろう.
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