時評
異文化としての「アメリカ看護論」
小野 重五郎
Jugoro ONO
pp.351
発行日 1987年4月1日
Published Date 1987/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209049
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アメリカ看護論の日本への紹介が続けられている.だが我々の日常の臨床にはどうもかみ合ってこない.これの吸収に熱心なナースからは日本の医師の権威主義や無理解が看護論の展開の障害であるとされているようだ.しかし,筆者は全く別のところに問題を見ている.臨床の全体像とのかかわりとは別個に,看護論が独自に展開されるアメリカの医師とナースとの関係のあり方は,それ自体アメリカ医療に特異な問題性であると思う.
我が国の病院機構の中では,医師集団(医局)とナース集団(看護部)は病院組織内部の不可欠の存在であるといってよい.しかし,良く知られているように,アメリカでは医師は病院の近くに自分の診療オフィスを持ち,入院させた自分の患者の診療に外からやってくる.病院と雇用関係にある医師は少なく,我が国の病院における医局のような機能はない.医師ないし医師集団は,病院機構にとって基本的には外部的存在であり,病院施設の利用者である.このattending physicianは病院と一定の契約を結ぶが,少なくともそれは雇用契約ではない.医師集団がこのようなものであってみれば,病院機構の中で看護部門の比重は当然大きなものになる.婦長クラスの医療経営にかかわる位置も,我が国における事情とはずいぶん違う.病院長が非医師であることも一般的である.こうした背景があるから医師集団との結びつきが稀薄な病院(?)はナーシングホームと呼ばれもする.
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