連載 今月のニュース診断
患者としての胎児
斎藤 有紀子
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1北里大学医学部医学原論研究部門法哲学・生命倫理
pp.802-803
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100600
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胎児の腫瘍摘出手術
今年6月,国立成育医療センターで,妊娠28週目の胎児の腫瘍を取り除く手術が行なわれた。胎児の疾患は,先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM)。腫瘍が胸の半分以上を占めるほどに巨大化して心臓を圧迫。肺が正常に形成されず,子宮内あるいは出産後に死亡する可能性が高いと診断された。母親の子宮を開いた状態で胎児の開胸を行ない,腫瘍の除去が行なわれた。
両親には,①そのまま妊娠を継続して出産する,②すぐに帝王切開し状況を見て手術する,③胎児手術で腫瘍を除去し,再び子宮に戻して妊娠を継続する,という選択肢が示され,両親は手術を選択したという。胎児は翌日状態が悪化,帝王切開で出産したが心不全が進行し,その次の日に亡くなった。米国のデータでは,本疾患は何もしなければ死亡率は推定80%前後,胎児手術の成功率は50~60%(共同通信8月13日)。同センターでは産科,外科,麻酔科,新生児科などの医師,看護師らによるチームを編成。両親の手術の希望を受けて,倫理委員会の承認を得て,手術を実施したという。
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