特集 助産師とメンタルヘルス
管理者としての臨床現場の風土づくり
村上 睦子
1
1日本赤十字社医療センター
pp.862-867
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100411
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はじめに
昨日,「話があったAさん,出勤してきましたか」と,看護師長に問い合わせた。Aさんは入職後1か月頃からなんとなく苦しんでおり,何度も話し合うが原因がはっきりしなくて,当人にしかわからない状況におかれている様子である。「どうも入職時から“うつ症状気味”だったんですよね」と,看護管理者の悩みは深まる。このように,看護職が仕事のストレスからか,退職するか転職するかの勝負にでようとする状況がある。病院勤務の看護職の背景に何が起きているのだろうか。
入職して間もなくからのストレスは,その人のパーソナリティからくるものではないか,という観念を看護管理者はもつ。うやむやななかで時間だけが過ぎ,彼女たちは“逃げられないストレス”に追い込まれていく。なんの手助けもできないジレンマが看護師長を襲い,勤務表の作成時期になるとその悩みは深まる。看護師1人の重みは大きいのである。
新人看護師のリアリティショックは,対人関係と看護技術面の両方が関係する。既に看護の職場では,対人関係に関することが多いことが示唆されている。企業でも,ストレスこそ“がんより怖い心の病気”と表現し,“見た目は健康であっても,心はボロボロ”という簡単なようで難しい問題を抱えている。看護界でも深刻さは同じであり,医療事故への危機感は,新人看護師の離職に拍車がかかる理由の1つであり,その結果,看護以外の職業を選択するという現象を招いている。その,医療事故が最も多い領域で仕事をする,助産師のメンタルヘルスについて考えてみたい。
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