JIM Report
病いと風土
真木 寿之
1
Toshiyuki Maki
1
1亀田総合病院神経内科
pp.732-733
発行日 1992年8月15日
Published Date 1992/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900553
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外来の患者さんを診察しており,何人もの患者さんが共通した症状や所見を呈していることに遭遇した際には,患者さんの住む自然環境や生活歴の聴取がその病態発掘に重要なキー・ポイントを握っている場合があります.とくに医師が患者さんと同じ自然環境下に住み,なおかつ移り変わる季節の足音を五感を通して直接感ずることができるような環境下では,好奇心さえあれば自然はひそかにその重要な情報を提供してくれます.自然界では動・植物は季節の変化に対応して驚くほどの多種多様な知恵を身につけて生きながらえ,われわれもまた現在では文明のおかげで快適な生活を営むことができます.しかし,自然の変化・破壊はその原因が不可抗力あるいは人工的なものにせよ両者に平等に作用し,その結果としてわれわれ人間を含めた動物・植物の連続した生態系に変化を来し,この変化した姿から自然のわれわれの身体に対する影響をある程度推察することが可能であります.
このような考え方の発端は,筆者が住み慣れた東京の雑踏を離れてまだまだ自然の残る千葉県の南端鴨川市に移ってからのことです.温暖な地であり,冬でもグラジオラス,キンセンカ,ストックなどの花が出荷され,病院からは太平洋が一望できます.当地に移り3年半が経ちますが,この間に日常の外来診療を通して気づいたこと,とくにこの地域の風土と関係すると思われる脳卒中の病態の一部について紹介いたします.
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