教養講座・文化人類学・11
文化と社会
高橋 統一
1
1東洋大学
pp.52-56
発行日 1969年10月1日
Published Date 1969/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908909
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26.文化の構造
民族文化を個人の性格や行動体系との緊密なかかわりあいのもとに,ある一貫した志向性をもつものとして捉えた問題が前2章で扱った課題であった。このいわば心理学的な文化の捉え方に対して,他方,文化複合それ自体に何らかの構造的原理を見出してゆこうとする立場がある。文化の構造的原理を追求するこの立場は,当然,われわれが先に19章で問題にした,社会人類学派による社会構造の概念やその問題視角と,ある程度類似している。ただ社会構造という場合には,現実の社会組織をもたらしている人間関係の構造的メカニズムを原理的に抽出するのが究極の目的であるが,「文化の構造」という場合には,よりひろく文化複合を全体として現出させている,構造的特質とでも言った意味あいがある。そしてそれが,歴史的所産としてよりも,そこに実存する文化それ自体を問題にする点で,いちおう,反ないし非歴史的立場であるということができる。
このような立場で研究をすすめたものを一般に構造主義とよんでいるが,その代表的存在は,フランスのレヴィ=ストロースである。彼の複雑で多面的な学説を詳しく検討する余裕はないので,ここではフランスの最近の哲学・思想界にも少なからぬ影響を与えている,そのユニークな発想と構造原理を追求する彼の論理展開の一端を紹介吟味してみよう。
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