教育月評
大学措置法について
村松 喬
1
1毎日新聞社
pp.20-22
発行日 1969年10月1日
Published Date 1969/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908901
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
施行困難な法律
「大学措置法」が,強行採決であれ何であれ,ともかく成立してしまうと,微妙な新しい情勢が生まれてきているようである。いずれにしてもこの法律は,社会的に見ても,全面的反対とまではいかなくても,大学自体や大学学長,学術会議など非常に強力な反対のなかで成立したので,成立後も反対は変わらずあるのだが,それでもそこにできあがった一つの「既成事実」は,全く無視することのできないものとしての存在をはじめた。文部省は,8月17日の法律施行を前にして,大学を閉校にするか廃校にするかなどの審議をする,いわゆる第三者機関の委員の人選をはじめた。しかし,反対の嵐のなかの成立であり,東大をはじめ多くの大学が,たとえ法律になってもその法律を守る気のないことを明らかにしたり,また文部省には協力しないとしている現状なので,たちまち人選に苦慮することとなってしまう有様である。
たとえ法律であり,国民がその意味で守る義務を持つものであるにしても,強力な反対を押し切って法律にしたものには「守らせる」ことについて,ある困難が生じるのはやむを得ない。頭から納得しないものを,ただ法律だからというのでそれに従うのは,法律を守ることの意味を十分知っているとしても,抵抗を感じるのは当然だし,その法律を改変するかあるいは廃止するかの正当な努力を払うことを,同時にしようとするのも当然である。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.