教養講座・文化人類学・10
文化とパーソナリティー
高橋 統一
1
1東洋大学
pp.60-64
発行日 1969年9月1日
Published Date 1969/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906235
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24.文化の型とパーソナリティー
進化や伝播という視点から文化を歴史的にとらえるにしろ(文化史=民族学),社会の構造や機能のメカニズムを現在的局面でとらえるにしろ(社会人類学),文化=社会そのものが全体として問題にされるだけで,それと個人との深いかかわりあいが,とくに問題にされることはなかった。このいわば「文化(または社会)と個人の関係」は,古くから哲学や人文・社会科学の諸分野において,それぞれに論じられてきたが,文化人類学の一部門として独自の研究領域をもつに至ったのは,主として米国においてであった。これが“文化とパーソナリティー(culture and personality)”とよばれる部門で,今日では文化人類学・社会学・社会心理学・精神分析学などにまたがる,行動諸科学の接点をなす新しい研究領域の一つにもなっている。ここでは,この研究領域の発展経過と理論化への進展のあらましを検討してみようと思う。
19世紀末以来,アメリカ人類学の偉大なる確立者F. ボアズ(先述)によってひきいられてきたアメリカ=インディアン研究は,1920年代後半に入ると,理論面で大きな進展をみせはじめた。その最初はインディアン諸言語を研究した,ボァズの高弟E. サピアである。
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