誌上講座・3
文化人類学
高橋 統一
1
1東洋大学
pp.60-64
発行日 1969年1月1日
Published Date 1969/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906119
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8.文化の進化と伝播
高度な現代文明を一応別として,地球上にはさまざまの未開後進地域の諸文化が現存する。これらの諸文化が,それぞれどこで起り,互いに影響を及ぼしながら形成され,変遷・発達して今日に至っているか,という問題が当然,提起される。これは極めて遠い「人類文化の起源」の問題につながるが,これは先史考古学や人類進化学に直接かかわる問題なので,しばらくおくとして,文化の歴史的発展を捉えるのに,大別して二つの立場がある。一つは,人類の諸文化は若干の例外はあるにしても大体において,一定の共通の進化形式をとって発展してきた,という見方である。これはC. ダーウィンらの自然科学の生物進化論に対応した考え方で,19世紀後半の思想・学問をつよく支配した,いわゆる「進化主義」による文化の歴史的理解である(文化=社会進化論)。文化人類学の創生期であるこの時期の民族学者の多くが進化主義の立場をとった。英国のH. スペンサー,E. B. タイラー,ドイツのA. バスチヤン(「民族学の一般的基礎」1884),米国のL. H. モルガン(「古代社会」1877)などが著名である。バスチャンによると,人間には「原質思念」とでもよぶべき斉一的な心性(同一の心の働き)があるから,文化も究極的には同一のものが生成される。そして現実にはさまざまの条件によって現れることもあるが,本来,諸文化は直線的・一系的な段階をとって進化・発展する,という。
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