連載 わかるようでわからない精神科のコトバ・2
措置入院
風野 春樹
pp.384-385
発行日 2002年4月1日
Published Date 2002/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903946
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精神科がほかの科と大きく違うところのひとつは,本人の意志に反して治療をすることもある,ということ.まあ,小児科だってそういうところはあるにせよ,無理矢理入院させたり体をしばりつけて薬剤を点滴したりはしないでしょう.ところが,精神科ではそれをします.なぜかといえば,結局はそれがその患者さんにとってもっともプラスになると医療関係者は信じているからです.今は精神症状のせいで理解してもらえないけれど,具合がよくなれば必ず治療してもらってよかったと思うはず.そういう考えのもとに,精神科医には一時的に患者の自由を奪う権限が与えられているわけです.
ただ,「措置入院」の場合はちょっと違います.措置入院というのは,自分自身を傷つけたり,他人に害を及ぼしたりするおそれのある者(これを縮めて「自傷他害」といいます)については,精神保健指定医2人以上の診断結果にもとづき,都道府県知事の命令によって強制的に入院させることができる,という制度.つまりこれは,もともと社会防衛の意味合いを持った制度なのです.あとで書くように,こうした社会防衛の考え方は「患者を治す」ことを第一とする医療の考え方とは矛盾する場合もあるわけで,このあたりに措置入院をめぐる問題のむずかしさがあります.
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