自己自身として生きるために/人間学的断想・2
人間存在における‘関係’と‘孤独’
谷口 隆之助
1
1元:八代学院大学
pp.514-518
発行日 1976年8月25日
Published Date 1976/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907017
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わたしたちはみな,だれでも,それぞれの人生のはじめから,他のひとたちとの‘関係’のなかに生みだされ,他のひとたちとの‘関係’のなかで育てられ,そして死ぬまで他のひとたちとの‘関係’のなかで生きていくものである.しかもこのことは,わたしたちがただ単に他のひとたちとの関係のなかにあるというだけではなく,わたしたちがその関係を主体的に生きるものとしてある,ということである.言いかえれば,‘関係’ということはそのままわたしたちの根本の存在のしかたなのであり,そしてその‘関係’をどのように生きるかということにわたしたちの根本の人生態度の問題がある,ということである.
しかし,それと同時に,わたしたちはまた,おたがいに決して他のひとの存在を代行することができず,また自分の存在も決して他のひとに代行してもらうことのできない,まったく孤独な存在として,自分の存在は自分の手で引き受け,自分自身として生き,そして死んでいくほかないものである.言いかえれば,‘孤独’ということもまたわたしたちの根本の存在のしかたなのである.
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