誌上講座・学生指導・13【最終回】
第12講 カウンセリングの技術
徳永 清
1
1明治学院大学広報室
pp.29-36
発行日 1970年12月25日
Published Date 1970/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906403
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■カウンセリングの深化
(4)「洞察」と「共感」
a)「洞察」とは何か
「洞察(insight)」とは,一般的には「見通す」とか「見抜く」という意味であり,これが転化して,「眼識」とか「悟り」という意味にかわり,また,「洞察力」というときには「見抜く力」とか「看破力」となって,ものごとの背後をつき,事象を深く正しく見通す能力をいうのである。心理学的には「直観」または「直観力」に通じるものであり,教育学的には「問題解決的学習能力」のひとつと考えられ,新しい視角から問題を観察し,新しい関係で問題を分析し,直観的に一種のひらめきで,問題解決の推理へ直進する学習原理をいうのである。「洞察」には,暗中模索の過程で,とつぜん頭のなかに一条の光が閃いて,(ああそうか!)と瞬時に難問を解決する性質がある。
カウンセリングにおいて,その過程でSにこの「洞察」が生じることは,自己認識,自己の性格に対する自覚等が覚醒されることを意味し,いわば,カウンセリングの最終目的に合致する機能をもつものである。カウンセリングの進行展開の過程で「洞察」の生じる意味は重大であるといわなければならない。
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