特集 面接と保健指導
カウンセリングの展望
伊東 博
1
1横浜国立大学
pp.10-13
発行日 1964年2月10日
Published Date 1964/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203031
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これまでの医学は,主として生物学的存在としての人間にかかわってきた.それは,種々の学問領域がますます細分化されてゆくという近代科学の1つの結果であったかもしれない.それによって,各科学領域およびその分科の専門化,高度化が促進されたであろうけれども,反面において,臨床諸科学が,本来統一的,全体的存在である人間を寸断するという弊害をも生み出したのである.
ベッドに横たわっている患者は,決して単なる生物でもないし,単なる精神でもない.医師が患者を1つの生物としてみるならば,かれの精神は,だれかによって,精神としてみられることを要求するであろう.患者の「生物」がついに精神を拒否することができると同じように.かれの「精神」もまた生物を拒否することができるのである.それは,かれの精神が生物を「超克」するといったほうがよいであろう.すべての患者が,死において,生物を超克するのではないだろうか.
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