臨床医からの質問に答える
遺伝カウンセリングとは
宇津野 恵美
1
,
野村 文夫
1
1千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部
pp.1492-1494
発行日 2009年12月1日
Published Date 2009/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102704
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
“カウンセリング”と銘打たれたものは美容,転職,法律,結婚,その他さまざまな分野で行われている.広辞苑(第5版)によると,「カウンセリングとは個人のもつ悩みや問題を解決するため,精神医学・心理学等の立場から協力し助言を与えること」とあるが,実際にこれらのカウンセリングがこの定義に基づいた内容で行われているかを判断するのは難しい.では,本稿のテーマである遺伝カウンセリングはどう定義されているかというと,長年多くの専門家に支持されてきたのは,四半世紀前に米国人類遺伝学会より提案されたものであり1),そこには「遺伝カウンセリングとは,ある家系の遺伝性疾患の発症や発症のリスクに関連した人間の問題を扱うコミュニケーションの過程である」と記載されている.
しかし,その概念は分子生物学や遺伝医学の発達,そして医療環境の変化を受けて移り変わってきた.2006年,米国遺伝カウンセラー学会は,時代に即した新しい定義として「遺伝カウンセリングとは,遺伝病の当事者や関係者が,遺伝病の持つ医学的,心理的,家族的影響を理解し,それに適応できるように援助するプロセスである」と公表している1,2).つまり,一般のカウンセリングと遺伝カウンセリングの大きな違いは,悩んでいるのは確かに相談者個人かもしれないが,悩みの中心である遺伝問題は家族や血縁者,さらには今後生まれてくるであろう子孫の問題でもある事実を無視できないことにある.そこで,この遺伝カウンセリングは誰がどのように,何を目的に行っているかについて筆者らの経験も含めて紹介したい.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.