寄稿
患者の立場からみた臨床心理 II
小野 殖子
1
1東北労災病院
pp.61-67
発行日 1969年2月1日
Published Date 1969/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906132
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治療的人間関係
一般的な意味での医学的面を基本とする治療的人間関係の最初は,診察・診断という段階からはじまる。(定期的健康診断や入学試験をうけるため,就職,運転免許をうけるための健康診断はのぞく)はじめて病院を訪づれる人々のうち,どの位の比率の人々が自発的に診察を希望してくるであろうか。一般に成人で自覚症状が強くその不安や苦痛が耐えがたい場合は,積極的に来院するが,小児や老人(特に頑固な性格者)また成人でも神経症など,現在でも世間から特殊視される病気の場合は,周囲の人々の強いすすめによることが多い。患者の一般的心理を一概にきめつけることは無理だが,人によつては急に重篤な病気にかかつた場合は別として,少々の症状が出てもわが身に限つてひどい病気にかかるわけはないと無理に不安を抑えたり,またある種の性格の人の病気を悪い方へと考え医師からの診断に激しい不安感をもつ。
家人などの強いすすめで受診した場合は,患者は現状を維持していれば(放っておけば)いつかよくなるかも知れないという思いが内心で強く働き医療をうけることは反抗的態度を示したり,症状をかくしたりすることさえある。このような場合,その人の内心はすでに病的心理状態にあり,特に老人の場合はこらえている苦痛と共に生命に対する不安感,孤独寂寥感が特に激しいと思われる。時には言葉少なになり,表情の動きも少なく抑うつ状態におちいることさえある。(神経症—neurosisの混在)
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