シンポジウム 現代における精神医学研究の課題—東京都精神医学総合研究所開設記念シンポジウムから
臨床心理学の立場から
河合 隼雄
1
1京都大学教育学部臨床心理学
pp.943-947
発行日 1974年11月15日
Published Date 1974/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202239
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
精神医学の領域は非常に多方面からの研究を必要とするものである。
古くからもある,精神と物質という二元的対立の問題も,この領域における研究を通じて,その秘密を露呈してくるのではないかとさえ考えられる。いろいろな精神障害の現象を研究することによって,ある人は人間の精神現象の物質的基礎を明らかにしたと思うかもしれず,また逆にある人は,人間の身体的な現象を心理的な基礎から説明し得ることを明らかにしたと思うかもしれない。おそらく,物質と精神の問題はこのような単純な因果連関を超えたものとして把握されることになろうと筆者は考えているが,ともかく,精神と身体の問題を共にはらむ領域として,始めに述べたごとく多面的な接近を必要とすることは事実である。物理学,化学,生物学,心理学,人類学などの研究結果が,思いがけない関連を見出す領域として,われわれは今後ますますinterdisciplinaryな研究を続けていく必要があろう。
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.