寄稿
臨床心理—患者について(Ⅰ)
小野 殖子
1
1東北労災病院
pp.64-67
発行日 1969年10月1日
Published Date 1969/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908912
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
医療について論じる場合,とかく治療方法の開発や治療技術の向上または保険財政を含め経済的問題,社会体制あるいは病院の管理運営面などについて,医師や看護婦その他の医療従事者の観点からとらえる傾向が強く,対象ともいうべき患者の存在を,個人的存在としてみていることが少なすぎるように思う。
好ましい形で医療の効果をあげるためには,医療を提供する側と同様にそれをうける側である患者(家族をも含む)の協力が大切である。毎日毎日,テレビをはじめマスコミによって健康に関することはいうに及ばず,さまざまの疾病・症状について,あるいはより健康になりそれを保つための方法や薬の広告など,いろいろの,しかも一方的な(みている者からの質問や反応は同時に伝わらない)宣伝が舞いこみ,今まで健康だと思いこんでいた人でも,あらためて自分の体や心のもち方をみなおしてみる時代なのである。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.