寄稿
患者の立場からみた臨床心理 I
小野 殖子
1
1東北労災病院
pp.63-68
発行日 1968年8月1日
Published Date 1968/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906057
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まえがき
第三者の健康人として患者をみる場合は多いが果して患者はその通りの生活をしているのだろうか。縦の世界(健康人としての立って活動できる生活)から横の世界(心あるいは肉体の疾患によりベッドにつながる生活)への転落を余儀なくされた場合,人々は種々の生活反応を示す。それは類型的な面もありまた独自な面をも持つ。しかしそのすべてが表面に現れる事はめずらしく,それだけに患者の立場から臨床場面の心理を率直かつ具体的に分析し考えてみたいと思う。
健康という言葉の定義はなかなか難かしいが,それ以上に全く健康な状態を維持することは努力のいることである。人間は個として存在する事は不可能であり,意志のいかんにかかわらず社会的な存在であり,その現実生活面でみてゆくと生命ある限り少々の痛い痒いのあるのはごく普通であり,成長期には関節などに成長痛がみられたり,朝起きがけに少々異和感があっても,それが仕事をしているうちに忘れてしまったりという事は日常誰しも経験することで,こうみてくると,健康といっても人によりその度合に幅のあることが解ってくる。
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