教育の歴史・1
入社式制度(原始時代の教育)支配階級の育成(古代都市国家の教育)
高倉 翔
1
1大阪学芸大学
pp.37-40
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905292
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
世界は今日,「教育競争の時代」にあるといわれ,各国は自国の将来の運命を青少年の教育に賭けている。1957年のいわゆるスプートニク・ショックを契機として,教育における国家的色彩が微弱であったアメリカ合衆国でさえ「国防教育法」(1958)を成立させて,国際的教育競争を正面きっていどんできている。この法案の支持を表明したアメリカの教育団体であるN. E. Aが,「光陰矢の如し。わが国の将来の勝敗は教室で決せられる」と声明をしたが,ここに,今日の教育競争意識が端的に表現されている。そこでは,人づくり政策とか人材開発政策(man power policy)とか教育投資(investment in education)とかがスローガンとされている。しかし,このような教育競争の進行は,今日の科学技術競争・経済競争と関連し,教育に対する国家的関心(national interest)の濃化によってうながされている。そこでは,人間はしばしば手段とされ,教育もまた他の目的の手段としてのみ考えられがちであり,人間の自由や幸福を実現する権利は無視されがちになっている。このような教育競争現象の強力な進行に対して,一方では,多くの警告がだされ,個人の基本的権利としての教育の回復がさけばれてもいる。すなわち,今日では,非教育的教育政策と,教育的教育政策との対立抗争がはげしくなっている,といえよう。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.