特集 スポーツと公衆衛生―地域の関係性の構築
スポーツと地域,都市,民族,国家―現代社会におけるスポーツの実相
谷釜 了正
1
1日本体育大学
pp.646-649
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101120
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
現代の豊かな社会に住まうわれわれには,折に触れて様々なスポーツを堪能できる環境が整備されている.行って楽しんだり,観て楽しんだり,支えて楽しんだりするだけでなく,様々なスポーツの知識や情報を知って楽しむこともできる.これは高度な産業社会に達した先進国の国民のみに享受することが許された現実である.
後述するようにスポーツは,イギリスを母国にして世界各国に普及し,今では全世界を席捲しつつある.いまなおオリンピック・スポーツを中心に非ヨーロッパ世界の開発途上国に進出している.このスポーツはイギリスの「地域」に根ざしたものであったが,しかし,イギリスの「都市」で合理化され,安全なルールとこれを統括する組織とを携えることによって「近代スポーツ」(=競技スポーツ)となり,スペクテータースポーツへと進展する過程で「国際スポーツ」となり,世界中の人々の受け入れるところとなった.このスポーツが,やがて,「民族」統合の手段として為政者の目に留まることとなり,「国家」の後押しを得て,一層の普及・進展を見るに至る.この間,民族スポーツは国際スポーツの周縁に追いやられつつも,近年では新たな機能が期待され,評価されるに至った.
本稿ではこのような視点から,現代社会におけるスポーツの実相に分け入ってみることにしたい.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.