教育の歴史・8
「国家目的実現の手段」から「教育を受ける権利」の保障へ
高倉 翔
1
1大阪学芸大学
pp.37-40
発行日 1964年12月1日
Published Date 1964/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905390
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日本国憲法の第26条は「すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する」と規定している。このように,教育を受けることを権利とする考えは,今日,世界の多くの国民の憲法にも明記されており,現代の教育を考える際の中心的柱となっている。ところで,これまで述べてきたように,教育は国家や支配権力の打算によって強力におしすすめられてきたり,また,一般大衆の教育需要に応じて,教育が自然にしかもバラバラに組織化されてきたところでは,教育を受ける権利を保障するという考え方は,見当たらなかった。一方,近代国家成立以後になると,教育が国家目的のために,国民教育制度として制度化され,発展するなかで,教育を受ける権利をいかにして保障するかということが,大きな政策課題となっていることについても述べてきた。
そこで,本号では,教育を受ける権利思想が発達してきたあとを,歴史的にふりかえってみよう。その場合,これまで述べてきた歴史的事実ともできるだけ関連させながら,しかも,義務教育に中心をおいて考えてみたい。義務教育に中心をおくのは,教育を受ける権利思想や制度が,義務教育思想や制度の中に,より明確に反映されるからである。
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