連載 訪問看護必携ノート・8
体表から探るフィジカルアセスメント
河田 みどり
1
,
森山 信男
2
,
安酸 史子
3
1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士後期課程
2東京大学附属病院血液浄化療法部
3岡山大学医学部保健学科
発行日 2002年12月25日
Published Date 2002/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903321
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No.22:ヘッド帯はどんな帯ですか.
ヘッド帯は,Henry Head(イギリスの神経学者,1861-1940)が示した,内臓のそれぞれの臓器に関連した皮膚領域のことです.腹痛には内臓に由来するもの(平滑筋の痙攣や実質臓器の腫大による被膜の過伸展)と壁側腹膜の炎症や刺激によって起こる壁側痛(体性痛)があります.このうち内臓からの疼痛刺激は感覚神経を通って脊髄の後根を経由して,大脳皮質の感覚野まで伝えられます.一方この後根へは皮膚分節(デルマトーム;本連載6月号参照)に対応した体幹の皮膚からの感覚線維も入っているので,中枢では内臓からの疼痛刺激がこの皮膚からの疼痛刺激として認識されることがあります.つまり内臓疾患に対応して感じられる皮膚の感覚過敏の領域をヘッド帯といいます.そしてこのような痛みを関連痛といいます.逆に,ある特定の体表部位の皮膚に痛みや感覚過敏がある場合はその局所皮膚や筋肉病変を反映している以外に,それに対応する神経の支配する内臓の病変をも知らせているのです.例えば肩胛骨のあたりの疼痛は胃潰瘍や胃炎の場合にもおこります.これらの疼痛刺激の関連性のおかげで,適切な皮膚部位に温湿布(湯たんぽなど)や冷湿布(氷嚢など)を行うと,その刺激が脊髄内で,運動神経ならびに前根から内臓運動線維に伝えられ,対応する臓器の血流に影響して鎮痛や消炎に働きます.
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