特集 クリティカルシンキングのスキルを育てる
第1部 クリティカルシンキングとは何か
クリティカルシンキングと教育方法
野地 有子
1
1札幌医科大学保健医療学部看護学科
pp.918-925
発行日 2002年11月30日
Published Date 2002/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903309
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はじめに
クリティカルシンキング(CT)とは,「自分の思考を思考する」プロセスであり,自己認識(self-awareness)が大切となる.よく引用されるPaulの定義によれば,CTとは「あなたの思考について思考するアートであり,より明確に,より正確に,より守りをかためるといったような思考ができる」ことである1).
CTは望んだ効果や意図した結果を生み出すので,人生において自分で方向を決定し,力を発揮し,自己調整するのに役立つ.アメリカでは,物心ついた頃から,CTを育てる働きかけが社会の中で行われている.例えば,幼児のデイケアセンターでは,おやつのジュースとミルクでも,1人ひとりに,どちらを選ぶか考える機会を与えている.小学生になると,学校の予算削減を補うために,近隣の住宅を1件1件まわって,クッキーなどを売って資金を調達したり,また教育方法にはディベートが積極的に取り込まれている.市民は陪審員として法廷に立つ機会がまわってきて,一生涯に数回,その義務を果たす.さらにボランティア活動も生活の中に組み込まれるなど,社会における様々な体験を通して,自己認識が培われていく.
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