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看護におけるクリティカルシンキングの意義
看護におけるクリティカルシンキング導入の黎明
1980年以降アメリカにおける教育改革の中心となってきたクリティカルシンキングは,看護教育においてもいち早く取り入れられた。全米看護連盟(National League for Nursing:NLN)は,看護のカリキュラムにはクリティカルシンキングのスキルを身につけるための内容を含めることを1989年に義務づけた。この時期,看護におけるクリティカルシンキングに関する書籍も相次いで刊行されている。1995年にロサリンダ・アルファロ・ルフィーバー(Rosalinda Alfaro-LeFevre)によって「Critical Thinking In Nursing(看護場面のクリティカルシンキング)」が,同年M・ガイ・ルーベンフィールドら(M. Gaie Rubenfeld)によって「Critical Thinking in Nursing : An Interactive Approach(クリティカルシンキング看護における思考能力の開発)」が,そして翌1996年にはメアリー・A・ミラーら(Mary A. Miller)によって「Critical Thinking Applied to Nursing(看護に生かすクリティカルシンキング)」が著され,看護におけるクリティカルシンキングへの注目度の高さを示している。
クリティカルシンキングは,目標に基づいて行われる論理的思考,意識的な内容を伴う思考である。こうした思考の育成が求められるようになった背景には,社会の変化があると言われている。欧米におけるクリティカルシンキング教育開始のきっかけは,1930年代から40年代にかけて生じたマスメディアの発達と戦争による社会の変化であり,医療においては,アメリカ合衆国におけるヘルスケア提供の急速な変化である。具体的には,医療のハイテク化や医療訴訟の増大,在院日数短縮化による訪問看護需要の増大,そして高度な思考力,想像力を要求される研究者を育成する必要性の増大などがあげられる。
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