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はじめに
在宅看護で必要となることの1つに無菌操作がある.無菌操作を確実に行なうには,基礎看護学と連動させて病院の中での清潔と不潔の概念をある程度ふまえておかなければならない.
無菌操作の技術の演習を行なった学生は,看護婦になったような気がすると喜ぶ.しかし,清潔なガーゼをカストから取り出そうとして落としてしまったり,カストの角に清潔な鑷子を触れてしまう.またある時は,患者の皮膚消毒に使用した鑷子の正しい持ち方をはじめ,無菌操作の技術は繰り返し行なわないと身につかない技術である.
清潔と不潔を区別することは,むずかしい.不潔になったからといって直接色が変わるわけではない.しっかりとした知識の上での判断が要求される.目に見えないので,“まあいいか”とそのままにしてしまうと,感染を起こし,ひいては患者の命とりにもなりかねない.
在宅の場合,最も看護婦に期待されることは,褥瘡の処置,創傷処置,経尿道的留置カテーテルの管理,膀胱洗浄などの医療処置技術が多い.いずれも無菌操作が要求される援助行為である.これらは保助看法による診療の補助業務であり,医師と充分な連携をとって実施することが大切である.
医療行為に関する援助を在宅で実施する場合,多くの問題が浮かび上がってくる.看護業務の範囲も曖昧であり,医師も訪問看護婦も,もっと看護業務の範囲を広げてもいいいのではないかと思っているとの報告もある.療養者・家族の期待に応えるためにも,今後は,十分な検討が必要になる.
在宅の場合は,看護婦が1人で行なうことが多いため,何事も原則をふまえて,環境(活動範囲,気候,介護者)などの状況を考慮して実施する.無菌操作を要求されるところでは,床や畳の上に落としたものをそのまま使ったり,滅菌ガーゼを布団の上に直接おいてはいけない.そのためには,どこが清潔でどこが不潔なのかを自分でしっかり区分し,他の人にもわかるようにして実施することが医療従事者としてのモラルであることを教えたい.このことは,基礎教育における在宅看護論の中で学生に強く意識化させていきたい点である.それと共に,無菌操作の重要性を家族にも理解してもらい,不必要な感染を防ぐことも大切である.この授業では,安全で感染予防を考慮した無菌操作のあり方を学生に学ばせたい.
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