連載 公衆衛生学―見方を変えたら・10
幻の伝染病
清水 英佑
1
1東京慈恵会医科大学環境保健医学教室
pp.127
発行日 1998年2月25日
Published Date 1998/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901780
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イラクが国連査察団の国外退去措置を取ったことから,中東は再び緊迫した事態になっている.その原因は,査察団が猛毒の神経ガスや生物兵器の開発疑惑を持ったことに対してイラクが査察を拒否したことによる.
生物兵器の1つとして挙げられているのが天然痘ウイルスである.しかし,天然痘はWHOの根絶計画の成果により1977年にアフリカの南部ソマリアで発生した患者が最後となり,以後患者の発生はない.1980年にはこの地球上からの根絶宣言が出された.その後天然痘ウイルスはアメリカとロシアの研究施設にのみ保管されていたが1999年に処分する方針をWHOは決定した.にもかかわらずである.イラクを含む数か国が天然痘ウイルスを秘密裏に所有しているという.
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