連載 ワークで学ぶ在宅看護論・2
暮らしを浮きぼりにする―概論「生活の理解」
網野 寛子
1
,
高橋 順子
1
,
桑原 光代
2
,
大塚 廣子
3
1都立板橋看護専門学校
2都立府中療育センター看護科
3都立府中看護専門学校
pp.548-551
発行日 1997年7月25日
Published Date 1997/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901651
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はじめに
女優を志す妹に頼まれて,20年も別居していた一家が映画の撮影に協力する一時の姿を描いた柳美里の『家族シネマ』が平成8年度の芥川賞を受賞した.「失われた家族」の心模様をクールに描写したところが,時代のテーマ性とも合致していて選ばれたのだろう.若い作者の感覚を妙に新鮮に感じた.
国民衛生の動向をみると,世帯数は増加し,1世帯当たりの構成人員は減少し続けている.入学する学生の生まれ年は昭和50年以降が大半となった.彼女らも多くが核家族で育ち,疑似体験や間接体験は多いが,直接の生活体験や社会体験は少ない,人間関係を作る力が弱い,つまり生きる力をもたずに高校を卒業してくる.このような特性をもつ若者が,他人の家に出向いて生活の中から看護上の問題点を兄出し,対象となる人が満足する世話をすることはそう簡単なことではない.
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