特集 授業としての臨地実習
医学教育における臨床実習
畑尾 正彦
1
1日本赤十字武蔵野女子短期大学
pp.121-125
発行日 1996年2月25日
Published Date 1996/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901314
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はじめに
医師はサイエンスとしての医学の知識と,病人に接する際のアートの両方を身につけていなくてはならないといわれる.従来の医学教育で最も欠けていたところをひとことでいえば,アートとそれを支える「医の心」の教育であった.
朝からの発熱がだんだん高くなった赤ちゃんを抱いて,心配顔で病院に来たお母さんに,真夜中に来たことを叱る当直医がいる.発熱にはサイエンスで対処できるだろう.しかし,母親の心配を受け止めるのはアートである.くすりの苦さや注射の痛さはすぐに消えるに違いない.しかし,当直医のことばで受けた心の痛みはいつまでも残る.その痛みが患者さんの心に残ることに気がつかなかったり,鈍感だったりすれば,その人の医師としての能力はいつまでも育たない.
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