連載 人間と教育・24(最終回)
一病息災の論
上田 薫
1
,
加藤 由美子
1前都留文科大学
pp.1056-1057
発行日 1994年12月25日
Published Date 1994/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901014
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一病息災とは,一病あるためにかえって健康に心を用い,無事を保ちうることをいう.同様にまた,わが不完全さを自覚しているために,謙虚でやわらかに事に対し人を深く理解しうることをいう.無病息災はその反対の極であり,なにごとをも割りきり,きめつける独善の思考が,それを支配している.
これまで私は教育のあり方,教師の生き方について,人間を大切にする立場の論を推し進めてきた.私としてはただあたりまえのことを主張したにすぎぬと思うのだが,あるいは人びとの意表に出ることが多かったかもしれぬ.世界は今ぎりぎりの抜本的変革を迫られているというのが私の見解であるから,それに応じうる新しいものの見方,かつてない視野,地平の展開こそ緊急不可欠のものと考えるのである.
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