連載 人間と教育・13
裏通りへの讃歌―ひそかな英知の安全弁
上田 薫
1
,
加藤 由美子
1前都留文科大学
pp.6-7
発行日 1994年1月25日
Published Date 1994/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900758
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このごろはたこ上げ羽根つきといった正月の子どもの遊びも,昔のようではなくなってしまった.でも目ぬきの大通りよりは,狭い裏の通りのほうが,いくらかお正月の情趣があるであろうか.車などめったに通らず,家並みも貧弱で,たいして人通りもないのにごたごたする裏通りは,どこか人間くささ,生活のなまの息吹きをもち合わせているように感じられる.
整然とした広大な表通りは,文句なしにりっぱだ.それはこの上なく有用で重要なだけでなく,町の美観でもある.だから人はそこを秩序正しく胸を張って歩く.見苦しいものは容赦なくはじき出されよう.しかしそういう晴れがましくいかめしい“けじめ”には,自然体の人間は往往にしてついていけぬのではないか.そんないい加減なやつの面倒はみられないから,早く裏通りにひっこませうということになるであろう.
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