Editorial
一病息災:糖尿病とともに生きる
大西 由希子
1
1朝日生命成人病研究所附属医院
pp.251
発行日 2023年3月15日
Published Date 2023/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204183
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告白しなければならない。研修医時代、私は糖尿病診療が苦手だった。「雨が多かったので、ウォーキングできませんでした」「外食が多かったので、インスリンを打てない時が多かったのです」と、患者さんは血糖管理がうまくできない理由を外来でおっしゃる。私自身は日々の忙しさを言い訳に、食生活は乱れ、運動らしい運動もせずに仕事ばかりしていたにもかかわらず、自分のことは棚に上げて「糖尿病患者さんの言い訳ばかり聞きたくないなぁ」と思うことさえあり、患者さんたちに全く寄り添えていなかった。
糖尿病を専門として志した理由は、大学院で糖尿病研究室の先輩方と一緒に研究させていただきたいと思ったからで、糖尿病診療を熱望していたわけではなかったかもしれない。そんな大学院生の頃、患者さんに「先生だって、おいしいものをおなかいっぱい食べたいでしょう?」と聞かれ、はたと気づいた。振り返ると、この1カ月に飲み会が何回あって、雨の日が何回あって、栄養バランスに気をつけた食事を何回できたか、自分は即答できるだろうか。「糖尿病患者さんは、食事・運動療法をいつも気にしながら生活しているなんて、えらいなぁ」と、患者さんに敬意をもって診療するようになった。
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