特集 患者の生き方に学ぶ
生涯学習の可能性―癌患者の生き方に学ぶ
出口 禎子
1
1玉川大学大学院
pp.1044-1050
発行日 1992年12月25日
Published Date 1992/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900495
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癌病棟で直接癌患者に接していると,現実には患者は他人が想像するほど暗い気持ちで生活しているようには見えない.なかには,死の病に立ち向かえずにいるのではないかと思える人もいるが,幾人かの人は入院しても自分の病名を知っても自らの生活姿勢を保持して生きているように見える.このような事実は私にとって人の強さを知る驚きとなった.
教育は人間の一生にどのように生かされ得るものか,人生にどんな効果をもっているものか.この「自分の死」を知るという衝撃を乗り越えて生きている幾人かの癌患者の姿に接して,受験や就職などで評価される教育(学習)の効果とは違う,学力,趣味,知識などによって自分らしい人生を作ったり,困難に出会ったときそれを乗り越えていく力を,もう1つの教育の効果として表せるのではないか.「自分の死」を知るという衝撃を乗り越えて生きる力は,どのようにして造られるのだろう.その人たちの自己形成における学習の過程を知りたいと思った.
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