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はじめに
看護基礎教育課程においては、看護学に関する多彩で専門的な知識が求められる一方で、複雑化した現代社会では幅広い知識を身につけ、異なる考え方や多様性を理解できるような総合力も求められている。大手前大学(以下、本学)は、学生が新しい時代を生き抜くための社会人基礎力に着眼し、ディプロマ・ポリシーとして「専門分野における知識と10の能力:問題解決力を修得し、それらを駆使して思考し、決断し、行動して社会に貢献することができる」を挙げ、卒業生が社会に貢献できる、価値ある人材として受け入れられるための社会人基礎力を重視した教育を目指している。
問題解決力の内容とは、経済産業省が主催した有識者会議により、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」として定義した内容を参考にしている。本学では、社会人基礎力の「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を組み合わせて問題解決力に必要な10の項目[表1]を設定し1)開講される全ての科目は、問題解決力が習得できるように授業設計し、シラバスに明記することになっている。
本学国際看護学部(以下、本学部)は2019年に開設し、今年(2023年執筆時点)で5年目を迎える。基礎看護学領域の看護技術に関する授業は「基礎看護技術Ⅰ〜Ⅳ」で構成されており、1年次にⅠ/Ⅱを、2年次にⅢ/Ⅳを学修し、4段階のステップを踏んで修得できるようになっている。担当教員は、他大学と比較して少人数であるが、学生にとって効果的な学習ができる授業計画が求められる。基礎看護技術Ⅲ(以下、本科目)の目的・目標は[表1]に示す通りで、2年次春学期の4〜7月の期間で約80名(1クラス40名の2クラス制)が基礎看護実習室で授業・演習を行っている。シラバスでは、問題解決力を習得するために必要な10項目の到達基準を1〜7で示しており、本科目では各項目がレベル1に到達できるよう授業設計していたが、今までこの評価がなされていなかった。一方、現代の学生の特徴として、デジタル操作を得意としつつも対面での対応を苦手とすることや、コロナ禍をとおして遠隔授業に慣れており、学生同士が対面で学び合う機会が減少していたという現状があった。
そこで今回、本科目において、2年次の学生の技術演習(以下、シミュレーション演習)を、学生個々が主体的に学び、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力、思考力の向上に効果があると言われている協同学習のジグソー学習法を用いて実施した。そして、社会人基礎力の問題解決力に着眼し、学生の自己評価で演習の効果を検討した。
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