特集 教養・基礎科目をとらえ直す
人びとの生活への想像力を養うために―社会学的視点の導入法
浦野 茂
1
1三重県立看護大学看護学部
pp.1070-1076
発行日 2020年12月25日
Published Date 2020/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201620
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はじめに
私はこれまで10年ほど、看護系大学において社会学に関連するいくつかの科目を担当してきました。いずれの科目も「教養・基礎科目群」というカテゴリーに位置づけられています。ですのでこれらの目的はどれも、専門的能力の養成というよりは、この能力を発揮するための基礎になる社会と文化についての関心と認識を育てることにあるとひとまずいえます。
とはいえ、私にはそれにとどまらない思いもあったりします。とくにヘルスケアの目標が人びとの生活の質の増進におかれ、したがってその実践の場が病院から地域社会へと広がっていく途上にある現状をふまえると、どうでしょう。今後はケアを必要とする当事者や地域社会に暮らす人たちとのいっそう多様で複雑な協働が求められるようになるはずです。そしてそうした協働のためには、この多様な人たちのそれぞれが何に価値を置きどんな暮らしを送っているのか、理解でき想像できる力がこれまでにまして重要になるはずです。
もしこの認識が正しいとすると、社会学関連科目には冒頭に述べたものよりもふみ込んだ意義があるはずだ―こんなことを考えつつ私は日ごろ授業を行っています。以下ではその授業についていくつかご紹介しますが、まずは社会学についてふれておきましょう。
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