教育の眼
想像力の自己教育
佐藤 忠男
pp.292-299
発行日 1974年4月25日
Published Date 1974/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906771
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教育の目標として想像力あるいは創造力の育成ということがよく言われる.それを言い出したのは主として産業界で,型にはまった人間では産業界は発展しない,想像力の豊かな人間が新しい製品を創造してくれることによってはじめて産業も発展し得る,というような大変現金な要求だったと思う.しかし私は,想像力というものをそういう現金なものだとは考えたくない.想像力で大事なのは,他人の心を想像できる,ということであり,他人の身になれることによって新しい人間関係を創造できる,ということであると思う.
しかし,他人の身になるということは,同じ日本人同士ならまだ比較的にやさしい.外国人となると難しくなってくる.そのギャップを埋めるのに大変役立っているのが映画である.例えばわれわれがイタリア人の心を理解するうえではイタリア映画というものがどんなに役に立っただろう.特に私が,なるほどこれがイタリア的な考え方と感情か,と,ハタと膝を叩きたくなるような感銘を受けた映画に,ミュージカルの“ナポリの饗宴”がある.
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