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はじめに
6月号から「松下看護専門学校の挑戦」というタイトルで連載を開始しました。3回目である本稿では、これからの日本の看護の中核をなすであろう、地域と看護のかかわりを私たちがどのように考えてきたかについてお伝えしたいと思います。
現行のカリキュラム編成に際し、初めに決めたのは、できる限り早い時期から地域の現実を見せること、そして3年間とおして地域とかかわるということでした。そのときはまだ平成21年改正指定規則の枠組みでの構築でしたので、在宅看護論4単位では難しく、他の科目との連携を図る必要がありました。そこで基礎看護学領域には、1年生の最初の基礎看護学実習での訪問看護ステーション実習と、基礎看護技術として在宅で行うような自宅での洗髪を考える機会を組み入れました。また、小児・母性・成人看護学領域にも地域で暮らす人にかかわる実習を組み入れ、専門基礎分野でも3年次に「地域包括支援」という地域にかかわる科目を創設しました。
「在宅看護論」は、概論をなくし、在宅看護技術の時間数も半分に減らしました。その代わりに創設したのが、1年生が地域に出て行って、人の暮らしにふれる「守口市で暮らす人と看護」、人の暮らしを災害に対する備えから考えてみようという「災害に備える暮らしと看護」です。まだ看護について学習が浅いうちに、できるだけいろいろな人や暮らしにふれ、生活者のイメージを豊かにもってもらえることを意図しました。
当校は、大阪府守口市にあります。住んでいる人は、年齢、性別、家族形態、経済状況など多種多様で、健康についてもさまざまな価値観をもち、病気であっても受診しなかったり、できなかったり、そもそも健康の法則を知らなかったりする人もおられるかと思います。そしてその暮らしは、守口市の市政方針、保健医療福祉の体制、教育、人口動態、財政などさまざまなものとつながっており、さらに大阪府政や日本の国政、さらに自然環境ともかかわっています。私たちはこれらをすべて含めて「地域」ととらえました。その守口市に住むすべての人が健康に過ごすために、看護ができることはあるはずですが、それを私たちが具体的に示してはいけないと考えていました。世界が急速に変化しつつある今、どんな最新モデルも数年で時代遅れになります。広い視野を見失わずに目の前の小さな事実を見つめ、時代の流れをふまえて今必要なことを見いだす力をもつことのできる人材、それが地域で求められる看護師像だと考えました。
今回は、このような、地域で求められる看護師を育成したいと願った私たち教員の挑戦をご紹介したいと思います。
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