連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・11
看護技能の5段階の理論
榊原 哲也
1
1東京大学大学院人文社会系研究科
pp.240-246
発行日 2019年3月25日
Published Date 2019/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201202
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本連載は、ベナー看護論を、そのベースとなっている「現象学」という哲学の視点から理解することを目指してきました。そのため、まずもってベナー/ルーベルの『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の5つの視点、すなわち「身体化した知性」「背景的意味」「気づかい/関心」「状況」「時間性」について解説し、この書物で展開されている看護理論のいくつかの特徴についても考察したうえで、前回は、ベナーの単著『ベナー 看護論』*2に立ち戻り、そこで採用されている方法について、現象学的人間観という視点から考察いたしました。
この書物の第一の目的は、「達人の臨床実践に埋め込まれている知の独自性と豊かさ」を明らかにして「看護理論」に組み入れ、これを看護実践や看護教育に活かすことにありました。そのため、ベナーは多くの達人看護師に―また比較のため新人看護師や看護学生にも―インタビューや参与観察を行い、それらによって得られたデータを、「ハイデガーの現象学」に基づいた「解釈的アプローチ」という方法によって明らかにしようとしたのですが、この方法を採用したのには、以下のような事情がありました。
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