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書評 ─『看護を教える人のための経験型実習教育ワークブック』─「教師力」向上のための振り返りを魅力的に促す,実習指導必携の実践書
前川 幸子
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1甲南女子大学看護リハビリテーション学部
pp.555
発行日 2018年7月25日
Published Date 2018/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201020
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看護学生は,臨地実習をとおして,目を見張るほどの成長を遂げる。それは学生が患者と出会うことで,病むことの苦難や生きることの喜びといった人生の意味を反芻したり,その人にかかわる看護師の看護観にふれたりすることで,自らの在り方を問い,看護実践をとらえ直す機会を得るからである。このような学生像は,本書の編者である安酸が重視する看護実践の経験を省察しながらケアリングを学ぶ姿勢として現れる。それは「経験型実習教育」理論が体現化される一端ともいえるだろう。しかし学生が臨地に赴けば,いずれもがこのように学べるのかといえばそうではない。看護を教える人の「教師力」が,その鍵を握る。
本書は,4章から構成されている。第1章は「経験型教育の学びを深める」ための編者の教育理論にもとづいた看護学のための実習教育が述べられており,第2章では理論にもとづく「経験型実習教育の導入ワーク」を進めるための実習教育の方法,さらに第3章で「読んで学ぶ 解説事例10」にもとづく具体的な指導方法が提示され,第4章は事例を発展させていく「シナリオをつくろう 研修事例8」である。本書で提言されているのは,「いかに教えるのか」ではない。教師は,学生を「よく見て,よく聴く」ことで学生の経験に接近し,学生が自らの経験を探求し意味を見出すという「反省的経験」へと導く,実習場面の教材化という実践である。そのために教師は,学生が患者とのかかわりにおける経験を自由に表出できるような,「教師の学習的雰囲気」を保証することが重要になる。
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