- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
子どもの心の問題は,いじめ,不登校,虐待,若年者の自殺,少年犯罪などと関係しており,近年関心が高まっている社会的課題である。75%以上の保育園・小中学校が,子どもの精神的な問題への対応を経験しているという報告もある1)。そのため,2011年度から「子どもの心の診療ネットワーク事業」として,都道府県自治体が主体となり,地域の拠点病院を整備し,病院・児童相談所・保健センター・福祉施設・学校・警察などと連携して子どもたちの心のケアを行っている。これに伴い,児童・思春期精神科や小児心療内科などの子どもの心の診療を行う病院が増加し,看護師が子どもの心のケアを行う機会は増えている。
しかし,子どもの心の問題に対する看護は,看護師養成課程において十分に位置づけられておらず,看護師が,自らの看護実践に不安や疑問を抱きながら子どもの心のケアを行っていることが報告されている2)。細川3)は,児童精神科に配属された新人看護師は,その看護の特殊性に衝撃を受けたと報告している。一方,医学領域では,一般の小児科医・精神科医の子どもの心の診療能力を高めるためのテキストの作成や,医学部卒前教育および卒後臨床研修において,子どもの心についての基本的知識,態度,技能の習得のための対策が検討されている4, 5)。
看護師養成課程において,子どもの心についての教育を検討するためには,まずはその現状を把握する必要がある。小児看護学や精神看護学で,子どもの心についての教育を実施したという事例はあるが6, 7),全国規模での実施状況の報告はない。そこで,本研究は,看護師養成課程における子どもの心に関する教育について,小児看護学と精神看護学における実施状況の特徴を明らかにすることを目的とした。子どもの心に最も関連が強い小児看護学と精神看護学における教育の役割分担の現状を把握することは,子どもの心についての教育の現状に対する看護師養成課程での課題を抽出し,今後の教育の在り方を検討する際の重要な資料となる。なお,本研究では,子どもを18歳未満の者とし,小児期に特徴的な精神疾患のみならずさまざまなメンタルヘルス上の問題,成長発達や療育上の課題を包括して「子どもの心」と表現する。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.