増大号第2特集 看護学生・教員エッセイ─入選エッセイの発表
学生部門
【柳田邦男賞】患者の心に寄り添うこと
内中 貴子
1
1公立西知多看護専門学校
pp.742-743
発行日 2015年8月25日
Published Date 2015/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200285
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今回の臨地実習で受け持った多くの患者さんのうちの1人,吉田さん(仮称),60代・男性は,誤嚥性肺炎のため入院していた。しかし,肺炎の症状が改善した後も再び誤嚥すれば生命に関わるため,NGチューブによる栄養補給を行っていた。また,NGチューブの自己抜去防止のため,ミトンによる抑制が行われていた。吉田さんは,認知機能に問題があることも判明していて,治療に対する協力など難しい部分もあるのだ。私は,初めて抑制を受けている患者さんを受け持つことになった。
吉田さんは,嚥下機能の低下が著しく,痰吸引が必要であった。毎日,看護師2人がかりで押さえながら痰吸引を行っていた。吉田さんがミトンをしたままの両手で激しく抵抗しながら,とても大きな声で,「いやだ,いやだ。痛い,痛い」と叫んでいた。それを見て,私は吉田さんの気持ちが少しでも落ち着けるような方法はないかを考えた。私は,吉田さんの両手を押さえつつ,抵抗しないときは腕を優しくさすろうと思った。いつでも押さえられるように注意しつつ,ゆっくりと腕をさすった。「いやだ,いやだ」とは言っていたけれども,日に日に抵抗らしい抵抗はなくなっていった。
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