第2特集 看護学生論文─入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
【柳田邦男賞次点】心で聴くこと
木戸 恵美
1
1茨城県立中央看護専門学校3年
pp.688-689
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102469
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「前はあんなに胃瘻使うのが嫌だったのに,こうして冗談言いながらやるようになったんだな。学生さんが,俺が本当は胃瘻使うのが嫌なのをわかってくれて,いろいろ一緒に考えてくれて良かった。ありがとう。治療のためだから仕方ないのはわかっている。本当は嫌なんだってわかってもらえるだけでいい。話を聞いてもらえるだけでいいんだ」。実習最終日,穏やかな表情で胃瘻からの経管栄養をうけながら,A氏は私にこう話した。私は,A氏との13日間を思い返し,感激で胸が熱くなった。
弱っている人や困っている人に出会うと,その人のために何かしてあげたい,と思う感情が自分のなかから溢れてくる。だから私は,看護師を志した。しかし,実習の経験の浅い学生の私にできることは少ない。まだ1人でできるケアも少ないし,沈んだ心を一瞬で晴れやかにするような言葉もすぐには浮かばない。ましてや病気を治してあげることもできない。病気という現実に向き合う患者さんのために,私にできることがあるのかと,不安を感じながら実習が始まった。
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