増大号第2特集 看護学生・教員エッセイ─入選エッセイの発表
学生部門
【柳田邦男賞】負の感情からの気づき
門脇 詩織
1
1独立行政法人国立病院機構岡山医療センター附属岡山看護助産学校看護学科
pp.626-627
発行日 2016年8月25日
Published Date 2016/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200557
- 有料閲覧
- 文献概要
私は,成人看護学実習Ⅲ(終末期患者の看護)の実習で,神経筋難病のAさんを受け持った。Aさんは,約10年前に,慢性炎症性脱髄性多発神経炎を発症された。Aさんは,人工呼吸器を装着され,唯一動かすことのできる,少ない動きでパソコンに文字を打ち込む装置“伝の心”を右顔面の筋肉で,使い,意思伝達をされていた。私は,Aさんと出会う前までは,初めて受け持つ言語的なコミュニケーンが困難な患者様に対して,緊張や不安で胸が一杯であり,Aさんの元へ足を運ぶことでさえ,恐怖に感じていた。
私は,Aさんに「初めまして。これからAさんを受け持たせていただくことになりました。よろしくお願いします」とあいさつした。するとAさんは,右半分の口唇を上方に引き上げ,応えてくださった。私は,Aさんの反応に少し緊張がとれたような気がした。しかし,病室を訪れても,何をすればよいのか,何を話せばよいのかわからず,不安や恐怖の感情は消えることがなかった。よく聞くと,実習のメンバーも同様で,初めて言語的コミュニケーションが困難な患者さんを受け持つということで悩んでいた。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.