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アクティブ・ラーニングとしてのグループワーク
アクティブ・ラーニングは手法や道具ではない
2012年の中教審答申において,アクティブ・ラーニングを展開するにあたって「グループ・ディスカッション,ディベート,グループワーク等」が有効な方法であると示されてから,高等教育機関においてグループワーク(以下,GW)を授業に採り入れようとする動きが加速している。しかし,アクティブ・ラーニングを進めるうえで,なぜ,GWが有効であるのか,GWをどのように展開すれば効果的なアクティブ・ラーニングが実現するのか,答申はこのことについて説明をしていない。またGWを効果的に進めるための創意工夫や注意すべき事柄について言及した論文や実践報告はきわめて少ない。そんななか,グループを編成し適切な課題を与えているのにGWが奏功しているとの実感を抱けない教員も多数いる。教員がGWの方法や成果を他の教員と共有することは希有であり,それぞれが手探りで実践している。高等教育の現場にはGWにまつわる混乱と困惑が漂っているといってよいだろう。それはアクティブ・ラーニングをめぐる誤解と混乱に似ている。
アクティブ・ラーニングの語義は「能動的・主体的な学習」である。それは状態・姿勢・動作・態度あるいは習慣であって,手法ではない。しかし,先の答申を受けたためか,これを手法としてとらえる風潮が世に広くはびこっている。繰り返すが,アクティブ・ラーニングを手法や道具としてとらえてはならない。道具は使用する場面が限定されるものである。しかし,道具が1つしかないと適用範囲を越えて用いられることがある。まして大学教育の修繕を期待されるアクティブ・ラーニングである。これをたとえば万能のハンマーとして工具箱に入れてしまうと,打つべき釘を探すうちに,学生の知的好奇心をついに釘に見立てて,これを打つ愚を犯す危険さえある。
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