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はじめに
私がタナーの臨床判断モデルと出会ったのは,オレゴン健康科学大学(OHSU)の看護実習室であった。モデルの図が実習室に掲示してあり,毎週実習があるごとに目に入った。看護の思考過程を端的に表わしており,すんなり頭に入るな,との印象であった。アメリカでも,看護教育は基本的に看護過程に基づいている。私の知る範囲では臨床判断モデルを系統的に使用しているのは,今のところOHSUもしくはオレゴン州だけである。米国でもまだ主流ではない臨床判断モデルであるが,看護における臨床判断能力の重要性は今までになく注目されている。その流れを受けて,看護教育において臨床判断モデルが参考にされるようになる日も遠くないと感じている。この2年間,OHSUで看護教育に携わるうちに,この臨床判断モデルが,徹底されて導入されており,OHSUの教育の強みとなっていると感じている。臨床判断モデルを考案したタナー先生は,私がOHSUに就職活動をしていた当時の学部長で,面接をしていただいた。温かい人柄が滲み出る方で,引退されてからも,気さくに教員の集まりに顔を出してくださったりする。日本的な感覚がピンとくるような感性の持ち主で,大変な日本好きである。
私は1990年代に日本で看護教育を受け,日米の4病院でスタッフナースとして,もしくは実習指導者として働いた。よって,私の感覚でもOHSUを除けば看護といえば看護過程である。そのような私がOHSUで臨床判断モデルを教えることになり,やや不安を覚えた。しかし幸いなことに,担当することになった授業要項に臨床判断モデルの効果的な指導方法が組み込まれていたのである。今回,このような執筆の機会をちょうだいし,臨床判断モデルを看護基礎教育でどのように教えることができるか,私の実体験を紹介したい。また,その導入においての難しさとメリットも考えてみたい。
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