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はじめに
近年,看護系大学の設置が増える一方で,各大学ともに実習先の確保に苦慮している。
本学においても,開学当初は地域看護活動論実習(以下,実習)の実習先として市町村・保健所で全学生数分の確保が困難であったが,4回生前期に位置づけている統合実習としての「離島・へき地医療体験実習(以下,離島実習)」の準備のために離島(三重県鳥羽市の菅島,神島)を訪ねるなかで,その離島を実習先と位置づけることにした。その理由として,離島は,各島にある唯一の診療所が,日常的に島民の健康を守っているという特徴があり,海に囲まれ境界が明確な地形のため,地域の特性や住民の生活を理解しやすく,住民同士のつながりも深く学生の受け入れが良好であることなどの特色があり,地域看護活動が実施しやすいのではないかと考えられたためである。なお,離島実習の目的は,都市部における医療システムと離島・へき地における地域住民と密着した全人医療との差を理解して,その人の顔(生活史,人となり,家族など)が見える看護や医療を体験し,看護の本質を考えることである。
本学では,離島実習に引き続き,5月から7月にわたり,2週間ごとに5クールに分けて,離島を実習地にした実習(以下,地域離島実習)や市町村保健センター2011(平成23)年度は7市町)での実習を実施している。2011年度は,1期生80人を,離島,市町村保健センターにそれぞれ26人,54人の配置で実施した。離島では,実習期間中には島で保健師の姿は見られず,また島を開催地とした保健事業(乳幼児健診は,本土で受診している)はなかった。一方,奈良県の市町村は,地理的な状況や交通事情から,市町村保健センターの対象となる人口規模や事業内容について地域差がみられた。このような実情から,離島と奈良県内市町村保健センターでは,地域の特性が大きく異なるため,実習中の経験に差が生じるのではないかと考えられたため,今回,実習終了後に学生に対して行ったアンケート調査から実習の評価を行い,今後の実習のあり方について検討したので報告する。
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