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【主な論文】「看護の道を選択するにおいて決定的な要素である共感」から
患者さんやそのご家族の気持ちを傾聴し訴えに共感することが看護をするうえで大切であることを,看護学生のときから,そして臨床にでてからも何度も習い取り入れてきました。JNE4月号のBarbara氏による「看護の道を選択するにおいて決定的な要素である共感」の論文のなかで,Empathy(共感)は,“他者が抱いている気持ちを察知する能力”とされ,看護の質に不可欠であると述べられています。共感―システム化理論(S-E Theory)が紹介され,この理論によると個々人の違いは共感性とシステム化の相対スコアによって説明づけられます。Barbara氏の研究では,共感とシステム化という二つの性質が看護学部を選択・継続するうえで重要な要素となるかをテーマにしています。また,看護学部のなかで男子学生と女子学生の比較,看護学部生と他分野を専攻する学生の二つの性質を測定し比較しています。一般的に,共感能力は男性よりも女性のほうが高く,システム化する能力は女性よりも男性が高いというデータがありますが,この研究でも看護学部内で比較し,同様の結果が得られました。看護学部の女性は他学部の女性よりも共感スコアが高く,興味深いことに男性の看護学生は,他の学部の女性よりも共感スコアもシステム化スコアも高く出ています。看護学部を学年ごとにみてみると,学年が上がるごとに,共感・システム化スコアがどちらも高くなっていることが示され,看護という学問を習得する過程でこれらの2つの能力を高めることができることがこの研究により示されています。この研究の限界は,アメリカ中西部にある大学で行われており,参加した大部分の生徒が白人であるため,他の地域や人種への一般化ができないことがあげられます。また,この研究で使われたツールは主観的なものなので,客観的データによる測定も必要であると書かれています。
私がアメリカで大学院を卒業できたのも,共感能力の高い優しいクラスメートのおかげだったと,この研究を読みながら改めて思いました。当時,担当のアドバイザーからも「他の学部よりも看護の学生は優しいから困ったことがあったらクラスメートにヘルプを求めるのよ」とアドバイスされたことを思い出します。経験から看護学生は男性も女性も優しい人が多いと思っていましたが,それをこのBarbara氏の研究はデータで示してくれています。日本人は一般的に小さな頃から相手の立場にたって考える思いやりの心を教わりながら育っているので,アメリカ人よりもさらに共感スコアが高いのではと思われます。
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