連載 ことば
共感
都留 春夫
1
1聖路加看護大学大学院
pp.641
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900269
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私がみたある心理学辞典の共感という項目には「共感(empathy):もともとはリップスの創始になる感情移入(独 Einfuhlung)という語の英訳」とある.よく考えてみると,この文章は英単語の説明であって,正確には共感という日本語の説明にはなっていない.同じ辞典の感情移入の項目は,「〔独 Einfuhlung〕,英訳のempathyの訳語にあてられた共感の同意語」ということになっている.別の辞典では,共感はsympathyと同意で,感情移入が独語のEinfuhlungと英語のempathyのことだとしてある.
ある英和辞典ではempathyに対して,心理学用語としては感情移入であるとし,sympathyに対しては,同情・思いやり・あわれみなどの訳語がつけられており,他に,同感・賛成・感応などともなり,生理学用語として交感・共感が出てくる.さらに,ある和英辞典をみると,共感はsympathyと訳されている.また,ある小型の英英辞典を開いてみると,empathyという項目はなく,sympathyにはfellow-feeling(友情とも共感とも訳せる),affectionate understanding(情愛をこめた理解),the sharing another' semotion, trouble etc.(他者の情動や苦しみを分ち合う―同情に近い―)と説明されている.
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