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書評 ―『看護学教育における授業展開 質の高い講義・演習・実習の実現に向けて』―よき看護教育の未来を予言し,創造する人を生み出すために
糸賀 暢子
1
1あじさい看護福祉専門学校看護学科
pp.207
発行日 2013年3月25日
Published Date 2013/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102339
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装丁は,本の顔である。そして,執筆者たちが託したメッセージを伝えるものでもある。レンブラントの絵画『女預言者アンナ』(1631年)を思わせる本装丁の印象を頼りに,本書の紹介をしてみたい。本書は,大学院生の“つぶやき”を発端にして,監修者が関わったこれまでの研究結果をもとに,看護学教育と評価の空白部分,「授業展開」に焦点を絞った「授業」の実践書である。そこから見えてくるのは,長きにわたり看護学教育を研究してきた執筆者の使命感,責任感であろう。厚生労働省看護研修研究センターが幕を下ろし,教育者としての知識,技能を学ぶ機会がないまま,授業,演習,実習に携わる看護職者が増加するなかで,試行錯誤している人,卒後教育,継続教育に携わる人に向けた看護教育の質の維持向上のために,執筆者が差し伸べる手であろうと思う。
本書は,わが国の看護教育の基盤となった学習心理学,教育心理学に則っている。よって,教育目標分類学(タキソノミー)による目標設定から授業計画,評価まで,一貫して行動主義,結果主義の立場から展開されている。「授業展開」を考えるうえで重要なのは,用語の定義とそこで使われる理論の理解である。本書の前半部分は,用語の定義,理論の説明,「授業設計」の概要が記されている。著者は,授業を「相対的に独立した学習主体としての学習者の活動と教授主体としての教授者の活動が相互に知的対決を展開する過程」と定義したうえで,学習心理学,教育心理学の考えのもとに学習と教授作用を説明している。
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