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はじめに
本稿は,一人の母親の相談から学生たちがボランティアでの子どもへの訪問ケアを始め,さまざまな出来事や困難に遭遇しながら成長した記録である。
小児癌と診断されたその子ども(以下,Aちゃん)は,数回の入退院を繰り返しながら手術,放射線治療,薬物治療を受けたが,余命半年と宣告され退院した。末期癌の子どもを受け入れる学校は少なく,治療目的でない入院はできず,せめて訪問看護をと相談したが医療行為を現時点で必要としない子どもの在宅ケアは備わっていないため,Aちゃんは家の中で外を眺めながら過ごしていた。家族は残りわずかな時間を普通の子どものように過ごさせたいと願い,学生は,入院している子どもに遊びを提供するサークルによる自宅への訪問と,その際の遊びの提供ができないかと勉強会やミーティングを重ねて,活動の目的と具体的に明らかにし,活動は開始された。
今回の関わりに参加したのは,依頼を受けた大阪市立大学医学部看護学科のサークル「あそピース」メンバー8名と,筆者(友田)の呼びかけで加わった甲南女子大学看護リハビリテーション学部看護学科2名,人間科学部子ども学科3名の計13名(実際に訪問を行ったのは,11名)。活動期間は2008年10月から2009年7月末である。
この長くも短い活動によって,癌を患い終末期と宣告され自宅療養している子どもの在宅ケアについて新たな方法を提案することとなったと同時に,看護職を目指す学生たちは普段できない学びを得,それは学生の人生さえも変えることとなるほどのものであった。
以下,学生たちの活動を記録に則って振り返ることを通して,ボランティア活動やAちゃんとの出会いが,看護教育としてどのような効果があったのか,学生たちの言葉を装飾することなくまとめ,学びと成長を報告する。
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