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書評 ―『質的研究の基礎 グラウンデッド・セオリー開発の技法と手順 第3版』―グラウンデッド・セオリー研究の道に迷ったときに読む本
大久保 功子
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1東京医科歯科大学医学部保健学科
pp.699
発行日 2012年8月25日
Published Date 2012/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102167
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本書は,明日からでもグラウンデッド・セオリーを用いた研究ができそうな気にさせてくれる本である。表紙も手元に置きたくなるほど素敵で,写真の場所を訪ねたことがある人にとっては,「あそこだ!」と郷愁を誘う。
この第3版は内容が刷新されており,引用されている具体例が以前にも増してビビッドに迫ってくる。実際に多くの看護研究者を育ててきた著者らの教育経験に基づいているからである。パソコンでのデータ管理方法やメモの活用法も追加され,分析の具体的な例示には,ベトナム戦争帰還兵へのインタビューを用いている。ベトナム戦争帰還兵の症状が,PTSD(posttraumatic stress disorder;(心的)外傷後ストレス障害,DVや虐待の被害者にも類似の症状がみられる)の発見の契機となったことは周知の事実である。PTSDにせよドラッグにせよ,なかったことにされがちなことに,看護研究者はあえて踏み込んでいく。看護学はどこに立脚すべきか,日本の看護教育ではあまり教育されていないのだが,立脚すべき一つの側面として,Social justice(社会正義)が看護学の根幹にあることをこの本は感じさせてくれる。
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